任意売却をする際、基本的に家具や家電などの荷物は処分してから家を明け渡すことになります。いかに高価な設備であっても、自己負担で処分したのちに家を売却することが原則であると理解しておきましょう。
ただし、買主の意向や買主との交渉次第では、それら設備を置いたまま転居しても問題にならないことがあります。
むしろ、様々な設備の残置が買主への印象を良くすることも少なくありません。可能であれば、残置物の処分について買主と話し合った上で任意売却の契約をすることが理想です。
ここでは、任意売却における残置物の考え方、少しでも低コストで残置物を処分する方法などについてご紹介しています。
残置物を残したまま任意売却は可能
不動産を売却する際、売却前に使用していた設備などは残したままの状態で売却できます。残しておく設備などのことを、残置物と言います。
ただし、任意売却を含め不動産を売却する際には、残置物を撤去してから明け渡すことが一般的です。
もし残置物を残したまま不動産を明け渡す場合には、買主による残置物の処分費用を、原則として売主が負担することとなります。
原則として残置物の処分費用は売主が負担する
多くの場合、買主は売主の残していった中古品を引き継いで使いたい、とは思いません。型が古かったり衛生面で不安があったりなど、様々な理由で新品を購入したいと考えます。
そのため、不動産の売買においては、あらかじめ売主が残置物を処分しておくことが一般的です。
もし残置物を残した状態で不動産を明け渡す場合には、通常、明け渡し後に買主が処分する際の費用を売主が負担します。
例えば不動産の売買代金が2000万円で処分費用が30万円の場合、売主が買主に対して30万円を支払うことに。または売買代金から30万円を差し引いた1970万円で売買を成立させるかの、どちらかの方法を選択することになるでしょう。
任意売却で残置物を処分する余裕がない場合
残置物をすべて処分する際には、相応のお金がかかります。住宅ローンの滞納から任意売却へ至ったほうが高額な処分費用を工面することは、決して簡単ではないでしょう。
このような場合には、あらかじめ買主へ丁寧に事情を説明し、残置物の処分費用を買主に負担してもらうよう交渉しましょう。もし買主が処分費用の負担に承諾したならば、売主は残置物の所有権を放棄する旨、書面で買主へ通知する必要があります。
不動産を売却する際には付帯設備表を作成する
任意売却を含め不動産を売却する際には、付帯設備表を作成して買主へ交付することが一般的です。
付帯設備表とは
付帯設備とは、不動産と一緒に残していく各種設備などのことです。水まわり設備や空調設備、給湯設備、照明設備、家具などの残置物を付帯設備と言い、それらを1点1点詳しくまとめた表が付帯設備表です。
付帯設備表を作成して交付する目的は、買主に残置物を正しく認識してもらうことです。
一般的に買主は内覧を経て不動産の購入を検討しますが、内覧の際に見た冷蔵庫やテレビ、照明などもそのまま残された状態で購入できると勘違いしてしまう買主も少なくありません。
逆に、売主が冷蔵庫やテレビを処分してから不動産を売却する予定にもかかわらず、自分で処分しなければならないと勘違いしてしまう買主もいるでしょう。
これら残置物に関する誤解を買主へ与えないよう作成して交付する書類が付帯設備表です。任意売却においても、付帯設備表は必須の書類となります。
なお、付帯設備表に記載されることの多い主な設備などは次のようなものです。
– 給湯器
– キッチン設備
– 浴室設備
– 洗面設備
– トイレ設備
– 冷暖房設備
– 換気設備
– 床暖房設備
– 照明設備
– 食器棚
– 床下収納設備
– 下駄箱
– 網戸
– 雨戸
– 障子
– 畳
– 扉
– テレビ
– カーテン/カーテンレール
– 物干し
– 火災警報器 など
必ずしも残置物がマイナス評価になるわけではない
不動産を売却する際には残置物を処分してから明け渡すことが原則ですが、必ずしもすべての残置物がマイナス評価につながるわけではありません。
残置物の評価額を取引価格にプラスすることは難しいかもしれませんが、特定の残置物が内覧時の買主の印象を良くする可能性は十分にあります。
買主に好印象を与えることの多い主な残置物を見てみましょう。
まだ十分に使用できる家電
「購入して5年以内の大型壁掛けテレビ」などのように、十分に使用できる家電であれば、内覧で買主に好印象を残す可能性があります。
不動産の売却に際して処分する予定だった場合には、残置しておいたほうが良いか買主に確認してみましょう。買主が残置を望むのでしたら、売主も処分費用を節約できます。
逆に、いかに高額な値段で買った家電であっても、購入から10年以上も経過した古いものは、あまり印象が良くありません。
買主の意向にもよりますが、古いものは処分することを前提としておいたほうが良いでしょう。
なお、いかに新しいものであっても、炊飯ジャーや電子レンジのような「食」に関する家電製品は、衛生面や心理面の抵抗から買主に歓迎されません。
大型の家具
こちらも買主の意向次第ですが、大型の家具は歓迎されることが少なくありません。例えば食器棚やタンスなどです。
これらを新規で購入することになると、通常は10万円以上の出費となることから、なるべく出費を抑えたい買主においては、残置を希望することがあります。
新しくて高性能な大型設備
エコキュートや太陽光発電システムなど、新しくて高性能な大型設備は買主から歓迎される傾向があります。
むしろ不動産の付加価値となりうる設備ですので、任意売却の際にはアピールポイントになるかもしれません。
もとより、これらの大型設備は撤去して処分したり、転居先へ運んだりする性質の設備ではありません。ですので、買主が残置を希望しなければ売主が費用をかけて処分することになります。
たとえ無料で譲り渡したとしても、その分、売主は処分費用を節約できる点をメリットと考えるべきでしょう。
エアコン・照明器具
あまり古い型でなければ、エアコンも買主に歓迎されやすい残置物です。買主が望むのでしたら、そのまま残しておいても良いでしょう。
古いエアコンを取り外して新居へ再設置したいと考える売主もいるかもしれませんが、エアコンを再設置する場合、取り外しと取り付けの工賃、および消耗品の費用で5万円ほどの費用がかかります。
一方、新居で新品を購入して取り付ける場合、工賃なども含めて出費は6~7万円となります(6~8畳用のエアコンの場合)。
わずかな差額で新品を設置できますので、買主が望むのでしたら、エアコンを残したままでも良いのではないでしょうか。
照明についても、部屋の雰囲気にマッチしているものであれば、さほど抵抗なく買主が受け入れてくれることもあります。
また、転居した経験のある方なら分かるかもしれませんが、入居直後から照明を使えることは大きなメリットです。
少しでも安く残置物を処分する方法
残置物が買主から歓迎されるケースもありますが、基本的には不動産の明け渡しまでに、売主は残置物を処分しておくものと認識しておきましょう。
しかし、任意売却を余儀なくされている状況の中、大きなコストをかけて各種の残置物を処分することは困難という方もいるでしょう。
そのような方は、まずは契約前の買主との交渉で残置しても良いものがあるかどうか、残置物の処分費用を買主が負担してくれるかどうかを確認します。
その上で、売主の負担で残置物の処分が必要となった場合には、少しでも安く処分する方法を検討してみましょう。
自治体の粗大ゴミ回収サービスを利用する
残置物を処分するための王道が、自治体の粗大ゴミ回収サービスです。
対象となる粗大ゴミや各粗大ゴミの料金は自治体によって異なりますが、自治体のサービスでもあることから、極端に高額な料金設定ではありません。
お住まいの自治体の公式HPなどを確認の上、料金の概算を計算してみましょう。
なお、自治体の粗大ゴミ回収には回収日時が決められているため、いつでも自由に回収してもらえるわけではありません。
更に、回収当日の朝に所定の場所へ粗大ゴミを運ぶ必要があることから、転居直前になって慌てて回収を依頼しても手遅れになる可能性があります。
例えば、回収当日にはすでに転居しているなどです。
タンスなどの大型家具を一人で所定の場所へ運べるかどうかもイメージし、自治体の粗大ゴミ回収という選択肢が現実的かどうかをよく検討してから依頼しましょう。
廃品回収業者に不用品を持ち帰ってもらう
廃品回収業者に依頼し、2トントラックなどで不用品をすべて持ち帰ってもらう、という方法があります。
自治体の粗大ゴミ回収サービスに比べれば費用は高くなりますが、基本的には柔軟な時間に回収してもらえる点、トラックの荷台に積み放題となる点、大型家具なども含めて不用品の搬出を手伝ってもらえる点など、自治体の粗大ゴミ回収サービスにはない多くのメリットがあります。
ちなみに2トントラックを1台手配した際の料金相場は、2万円台~3万円台となります(大型家具などを依頼する場合には別途料金がかかる場合もあります)。
リサイクルショップに売却する
大型リサイクルショップなどに不用品を持参すると、意外な高値で買取してもらえることがあります。
まだ使用可能な家具や家電はもちろんのこと、使えなくなった家電でもジャンク品として無料で引き取ってもらえることもあります。
無料と聞くと損をしたような気持ちになるかもしれませんが、自治体や廃品回収業者での処分の際に費用がかかることを考えれば、決して損をしているわけではありません。
大量の不用品があるなどの理由で店舗に運べない方へ向け、無料出張買取サービスを用意しているリサイクルショップもあります。
ネットオークションで売却する
ネットオークションを通じ、自身での不用品の売却も可能です。状態の良い家電や家具などであれば、十分に買い手が付く可能性もあるでしょう。
買い手との直接売買となるため、中間マージンが発生しないことからリサイクルショップよりも高い価格で売却できるかもしれません。
なお、最近ではパソコンやデジカメを用意することなく、スマホで撮影した商品をそのままスマホアプリ経由でオークションへ出品することも可能となりました。
一度もネットオークションを利用したことがない方でも、意外とスムーズに出品・売却できることでしょう。
ネットオークションを通じて不用品を売却する場合、リサイクルショップとは違って、すぐに売れるとは限りません。
数日、数週間という時間がかかることもありますので、時間の余裕を持って売却活動を進めていきましょう。大型の不用品でなければ、新居へ引っ越した後にネットオークションで売却しても良いでしょう。