任意売却すると、団体信用生命保険(団信)は失効します。失効すれば、当然ですが保険料の支払い義務も残りません。
任意売却後の残債の返済に団体信用生命保険の保険金を充当しようとお考えの方は、注意が必要です。
任意売却をすると団体信用生命保険(団信)は残らない
任意売却をすると、団体信用生命保険は残りません。
団体信用生命保険の保険料は、契約者に代わって銀行が保険料を支払っています(実際には契約者の金利に上乗せされています)。
契約者に万が一のことがあった際、保険金で住宅ローンを回収するためです。
しかし、任意売却をした場合、銀行は契約者へ期限の利益(契約者がローンを分割で返済する権利)の喪失を通知し、保証会社へローンの残債の一括返還を請求されます。
以後は団体信用生命保険に加入している意味がありません。そのため、団体信用生命保険も失効する形となります。
また、団体信用生命保険の保険料は住宅ローンの金利に上乗せされている以上、任意売却によって住宅ローン自体が消滅すれば、以後の保険料の支払いも消滅します。
任意売却によって団体信用生命保険は失効するため、保険金を任意売却後の残債の支払いに充てることができなくなくなる点に注意が必要です。
住宅ローンがフラット35の場合は例外
銀行からの一般的な住宅ローンとは異なり、住宅金融支援機構のフラット35による住宅ローンの場合には、団体信用生命保険の加入が任意になります。
仮に加入した場合には、契約者が毎年1年間の保険料を前払いする形となります。
保険料を前払いしている以上、任意売却であるか否かにかかわらず、保険の有効期間内なら保険金支払いの対象です。
すなわち、任意売却の残債に保険金を充てることも可能になる、ということになります。
団体信用生命保険(団信)が失効する任意売却以外の条件
任意売却の他にも、団体信用生命保険から保険金が下りないケースもあります。主なケースを3つほど見てみましょう。
告知違反した場合
一般的な生命保険と同様、病気にもかかわらず「病気ではない」などと嘘の告知をして団体信用生命保険に加入した場合、万が一のことがあっても保険金は下りません。
ペアローンにしている場合
親子や夫婦などでペアローンを組んで、銀行の担当者が片方の契約者のみを団体信用生命保険に加入させていた場合、加入していないほうに万が一のことがあっても保険金は下りません。
住宅ローンを組んで1年以内に契約者が自殺した場合
多くの団体信用生命保険では、住宅ローンを組んで1年以内に契約者が自殺した場合、保険金が下りないというルールを設定しています。
団体信用生命保険(団信)とは
団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済途中で契約者が死亡した際、または高度障害などになった際に、契約者に代わって生命保険会社が住宅ローンの残債を支払う保険制度を言います。
保険金が支払われれば、以後は住宅ローンの返済をする必要はありません。
例えば契約者が事故や病気などで亡くなった場合、遺族は住宅ローンの残債を返済することなく、同じ家に住み続けることができます。
団体信用生命保険(団信)で保険金が下りる条件
一般的に、契約者が死亡した際、または契約者が高度障害を負った際に団体信用生命保険から保険金が支給されます。
高度障害の定義
公益財団法人生命保険文化センターでは、高度障害を次の7つに分類しています。
- 両眼の視力をまったく永久に失ったもの
- 言語またはそしゃくの機能をまったく失ったもの
- 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護をようするもの
- 両上肢ともに手関節以上で失ったかまたはその用をまったく永久に失ったもの
- 両下肢ともに手関節以上で失ったかまたはその用をまったく永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またその用をまったく永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
なお、生命保険会社によっては、3大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)に罹患した際にも団体信用生命保険が下りる特約を用意している場合もあります。