任意売却は、不動産会社や弁護士、司法書士、ローンを組んだ銀行などで相談できます。ただし、それぞれの専門分野は異なることから、より有利に任意売却を進めていくためには、個々の状況に合った適切な相談先を選ぶ必要があります。
ここでは、任意売却の相談先による違い、適切な相談先の見極め方、相談先を選ぶ時の注意点などについて解説しています。
任意売却はどこで相談を受け付けているのか？
任意売却は、主に不動産会社、弁護士・司法書士、ローンを組んだ銀行で相談できます。それぞれの相談先の違いを見てみましょう。
不動産会社
相談先の第一候補が不動産会社です。
任意売却の最大の目的は、なるべく高い価格で住宅を売却し、以後の残債を減らすことにあります。不動産会社は、なるべく高い価格で住宅を売却する専門機関なので、弁護士・司法書士・銀行と比較すれば、任意売却の目的にもっとも適した相談先となるでしょう。
ただし、任意売却には特殊な交渉力や専門知識が必要になることから、どの不動産会社に相談しても結果は同じ、というわけではありません。
任意売却の実績が豊富な不動産会社は、状況に応じて提携する弁護士・司法書士を紹介してくれたり、金融機関と一定の信頼関係を構築していたりなど、任意売却を円滑に進めるための土台があります。不動産会社に相談する場合には、任意売却の実績が豊富な業者を選ぶようにしましょう。
弁護士・司法書士
住宅ローンの他にも多くの借金を抱え、返済困難であることが明らかな方は、弁護士・司法書士に相談してみましょう。
住宅ローン以外にも多額の借金を抱えている方は、たとえ任意売却で住宅ローンの返済を楽にしたとしても、他の借金の返済が困難なため、最終的に債務整理（自己破産、個人再生など）へ至る可能性があるでしょう。
債務整理の相談や手続きの専門家は弁護士や司法書士です。そのため、多額の借金がある方の相談先としては、不動産会社よりも弁護士・司法書士のほうが適していると言えます。
ただし、もし自己破産と同時に任意売却も行うのでしたら、弁護士・司法書士の他にも不動産会社のお世話になる必要があります。その場合には、先に不動産会社とともに任意売却を行い、その後、弁護士・司法書士と自己破産をする順番がおすすめです。
なお、司法書士は自己破産手続きの書類作成などをサポートしてくれるものの、本人の代理人となることはできません。裁判所での手続きの専門性などを考慮すれば、司法書士よりも弁護士に依頼したほうが無難かもしれません。
住宅ローンを組んだ金融機関
住宅ローンの返済が困難になった場合、不動産会社や弁護士・司法書士へ相談する前に、住宅ローンを組んだ金融機関へ状況を説明しましょう。
金融機関に相談をすれば、一般的には返済計画の見直しに応じてもらえます。提示された見直し案で返済できる見通しが立てば、任意売却する必要はありません。いわば最善の解決策にもなります。
ただし、もし見直し案でも返済できる見通しが立たなければ、任意売却を検討しなければならないでしょう。一般的に任意売却の相談先は本人が探しますが、金融機関によっては相談先を紹介してくれる場合もあります。
金融機関から紹介された相談先を選ぶ義務はないので、自分でも相談先を探し、より自分にとって有利な相談先を選ぶようにしましょう。
任意売却の最適な相談先の見極め方
不動産会社、弁護士、司法書士などのいずれを選ぶかにかかわらず、相談先を選ぶ際に共通して大切となるポイントがあります。適切な相談先の見極め方をご紹介します。
任意売却の実績が豊富かどうか
任意売却には高度な専門知識と交渉スキルが必要です。「不動産のことだから不動産会社に任せておけば安心」「なんでも詳しい弁護士さんに依頼すれば安心」というものではありません。
任意売却の経験が足りない相談先を選ぶと、不利な条件での任意売却となってしまう可能性もあれば、最悪の場合、任意売却を成立させられず競売に至る可能性もあります。
餅は餅屋と言いますが、任意売却を相談する場合には、任意売却の実績が豊富な業者を選ぶことが鉄則です。
相談者に不利な話もしてくれるか
任意売却というワードでネット検索してみれば分かりますが、任意売却の情報を提供している業者は、任意売却のメリットばかりを強調する傾向があります。
しかし実際には、任意売却にもデメリットがあることは事実です。例えば、競売までに買主が現れないこともあります。また、離婚した連帯保証人の元配偶者とスムーズな連携がとれず、任意売却をできないケースもあります。
任意売却のメリットばかりを強調する業者ではなく、デメリットも包み隠さず説明してくれる業者のほうが、信頼度は高いと言えるでしょう。
残債処理の相談まで応じてくれるか
任意売却を行っても、住宅ローンを完済できるとは限りません。残債が残れば、引き続き返済を続けていく必要があります。
すでに売却金で多くのローンを返済しているため、それまでに比べると返済は楽になりますが、生活に困窮している方にとってみれば残債の支払いも大変です。
任意売却の相談先を探す際には、残債処理に関する相談にも対応しているかどうかを確認しておいたほうが良いでしょう。
弁護士・司法書士と提携しているか
住宅ローン以外の借金も多く抱えている方は、任意売却の相談先として不動産会社を選ぶ際、弁護士・司法書士と提携しているかどうかを確認しましょう。
なぜなら、任意売却とあわせて債務整理が必要となる可能性があるからです。債務整理は弁護士・司法書士の専門分野ですので、各種手続きをスムーズに進めるためには、弁護士・司法書士と提携している不動産会社を選ぶようおすすめします。
債権者との信頼関係を構築しているか
任意売却を行うには、債権者（金融期間や保証会社など）の同意が必要です。同意を得るためには一定の交渉力がポイントとなりますが、すでに債権者と信頼関係を構築している業者であれば、交渉はスムーズに進みます。
相談先を選ぶ際には、自分の債権者との間で任意売却を行ったことがあるかどうかをヒアリングし、双方の信頼関係の度合いを想像してみましょう。
任意売却以外の選択肢も示してくれるか
住宅ローンの返済が困難になった場合の解決法としては、任意売却の他にも、親子間売買や親族間売買、任意整理、個人再生、自己破産など複数の選択肢があります。親族との関係や借金全体の状況によっては、必ずしも任意売却が最善の解決法と言えません。
相談先を選ぶ際には、任意売却に限らず、客観的な視点で複数の選択肢を比較してくれる業者を選ぶと良いでしょう。結果として任意売却になったとしても、そのような業者であれば最後まで信頼して仕事をお任せできます。
任意売却成立後のアフターフォローもあるか
任意売却成立後は、残債処理だけではなく、引越し先の確保など新生活の準備も進めなければなりません。第三者から当面の生活費を工面しなければならない方もいるでしょう。
任意売却の相談先を探す際には、人生をリスタートできるラインまでフォローしてくれるかどうか、しっかりと確認してみてください。くれぐれも「任意売却が成立したらサヨナラ」という業者を選ばないようにしましょう。
任意売却の相談先を決める時の注意点 ～こんな業者は避ける～
任意売却の相談先を選ぶ際には、以下で説明するような業者を避けたほうが無難です。
任意売却のメリットだけを強調する業者は避ける
上の説明と重複しますが、任意売却のメリットばかりを強調する業者は避けましょう。
もちろん、そのような業者のすべてが悪徳業者というわけではありません。また、相談者思いでないというわけでもありません。
ただし、いかにメリットの多い任意売却とはいえ、デメリットや失敗するリスクがあることも事実です。それにもかかわらずメリットばかりを強調する業者は、任意売却の実績が少ない可能性があります。
任意売却の実績が豊富な業者は、任意売却の失敗例も多く目にしています。任意売却は相談者の人生の節目でもあることから、軽々しくメリットばかりを伝えることはできません。
メリットとあわせてデメリットも率直に伝えてくれる姿勢こそ、その業者の実績が豊富かどうかを判断する基準にもなるのではないでしょうか。
談初日の契約を迫る業者は避ける
任意売却は競売の入札日までの完了させる必要があるため、可能な限り早めに売却活動を始めることが重要です。一方、任意売却のデメリットやリスクの説明も不十分なまま、相談初日の契約を迫る業者は避けるべきでしょう。
はじめて任意売却の相談をする方は、住宅ローン滞納に伴う強い不安の中で業者を訪れます。そのような精神状態では、目の前にいる専門家らしき人が自分を救ってくれる頼もしい人に感じられるものです。その精神状態に付けこみ、相談初日の即決を求めてくる業者があるので要注意です。
任意売却は時間を争う売却活動となるため、早めに契約して活動を始めるに越したことはありません。そのため多くの業者は、早めの決断を求めてくるでしょう。
ただし、デメリットやリスクの十分な説明を行ったり、相談者がよく考える時間を与えたりすることは、契約を提案する大前提となります。
数字に基づく具体的な実績を示せない業者は避ける
理想的な任意売却を成立させるためには、豊富な実績に基づくスキルが必要です。ところが業者の中には、「弊社は実績豊富です」「任意売却の専門家が在籍しています」という漠然とした説明のみで、具体的な実績や事例を数値で示さない業者もいます。そのような業者については、念のため避けておいたほうが良いでしょう。
もちろん、数値を示さない業者は実績が乏しいというわけではありません。ただし一般的に考えて、実績が豊富な業者は、相談者が求めなくても数値を示したがたるものです。数値を示してこない業者は、自社の実績やスキルに自信がないのかもしれません。
【まとめ】信頼できる相談先とともに人生リスタートの道筋を描きましょう
住宅ローンの返済が難しくなってきたのでしたら、まずは住宅ローンを組んでいる金融機関に状況を説明しましょう。金融機関が提示する返済計画の見直しで事が解決するのでしたら、それに越したことはありません。
一方で、もし金融機関が提示する見直し案でも返済が困難と感じられた場合には、不動産会社・弁護士・司法書士などに相談します。主に住宅ローンの返済に困っているのでしたら、不動産会社に相談しましょう。また、住宅ローンだけではなく他にも多額の借金を抱えているのでしたら、弁護士や司法書士に相談しましょう。
当ページでご紹介した相談先の見極め方や注意点なども踏まえ、親身になってくれる良心的な相談先を見つけ、一刻も早く人生をリスタートさせる道筋を描いてください。
