離婚時の住宅ローン残高、どう対応する?
離婚時に住宅ローンが残っている場合、その対応は複雑になる可能性があります。
まず、住宅ローンはマイナスの資産となります。つまり、離婚時にはプラスの資産同様に住宅ローンもマイナスの資産として2人で分担する、ということが基本的な考え方になります。
自宅の名義と住宅ローンの名義を確認
住宅ローンの契約内容を確認することが重要です。
法的には、家の名義とローンの名義が違っても全く問題ありません。しかし、名義を変えようと思っても、住宅ローンの名義変更は簡単ではないので注意が必要です。
アンダーローンとオーバーローンの違い
アンダーローンとオーバーローンは、不動産の売却価格とローン残高との関係を表す言葉です。
– **アンダーローン**
アンダーローンは、住宅の資産価値が住宅ローンの残高を上回っている状態を指します。
この状態では、住宅の価値がローン残高を超えているため、ローンの返済に余裕があると言えます。
– **オーバーローン**
オーバーローンは、不動産の売却価格が住宅ローンの残高を下回る状態を指します。
この場合、不動産を売却してもローンを完済できず、残債の返済が必要になるため、任意売却などの措置が考慮されることがあります。
現在の住宅の価格を把握する
現在の住宅価格を把握するためには、以下の方法があります。
- **不動産評価額の調査**: 不動産評価額は5種類あり、それぞれの評価額は目的によって異なります。例えば、相続税を計算したい場合は相続税路線価、売却価格を調べたい場合は実勢価格か固定資産税評価額を調べます。
- **一括査定サービスの利用**: 不動産の一括査定サービスを利用すれば、無料で複数の不動産会社から不動産の価値を教えてもらえます。
- **公示地価・基準地価の調査**: 公示地価、基準地価は国土交通省が運営する「土地総合情報システム」から検索することが可能です。
- **売り出し価格の調査**: 購入者向けの物件検索サイトを使って、現在の物件の売り出し価格からも、不動産相場を調べることができます。
自宅売却のプロセス:スムーズな手続きのために
アンダーローンの場合の売却方法
アンダーローンの場合、住宅ローンの残高が自宅の売却額を下回るため、自宅を売却することでローンを完済できます。
これにより、売却後の手元に残った資金は夫婦間での「財産分与」として分け合うことが可能です。
財産分与には清算的財産分与(共同で形成した財産を公平に分配)、扶養的財産分与(離婚後の生活保障のため)、慰謝料的財産分与(離婚の原因に対する損害賠償)の3種類があります。
どのように財産を分けるかは、公平性を基準に話し合いで決定し、家庭裁判所への調停や審判を申し立てることも可能です。
オーバーローンの場合の売却方法
オーバーローンの場合、住宅ローンの残債が売却価格を上回るため、売却してもローンを完済できません。
しかし、売却価格と住宅ローン残高の差額が小さければ、差額分を預貯金などで繰り上げ返済することで完済し、売却も可能です。
この場合、売却後の住み替えなどにどの程度の影響があるかを慎重に検討する必要があります。
単独名義と共有名義の取り扱い
単独名義の場合、基本的には名義を持つ人の判断で売却が可能ですが、名義のない配偶者にも財産分与の権利があります。
住宅ローンが連帯保証としている場合、特に注意が必要です。
例えば、夫が名義人で妻が連帯保証人の場合、夫のローン返済が滞ると妻に返済の義務が発生する可能性があります。
共有名義の場合、売却には全名義人の合意が必要です。
オーバーローン状態では売却が難しく、どちらか一方が住み続けるケースも考えられます。
もし住宅ローンが連帯債務ならば、その家に住まなくなった方も返済義務を負うことになります。
共有名義の住宅を売却した場合、通常は名義の持ち分に応じて売却代金を按分しますが、離婚の場合は財産分与の意味合いがあり、持ち分に関係なく分割することができます。
オーバーローンの家をどうするかには、以下の4つの方法が考えられます。
- **名義人が家を取得し、返済を続ける**
名義人が家を引き継ぎ、住宅ローンの残債を支払います。
この場合、連帯保証人の変更が重要です。夫が支払い不能になった場合、離婚後でも妻に支払いの義務が生じるためです。
- **名義人でない方が家を取得し、名義人が返済を続ける**
例えば子どもの養育環境を考慮して妻が家を引き継ぐ場合などがあります。
ただし、この場合、離婚後に名義人が支払いを滞らせるリスクがあります。
- **家を売却し、足りない分は自己資金から返済する**
夫婦のどちらも元々の家に居住しない場合、オーバーローン状態であっても売却が可能です。
売却額では支払いきれない残債を、夫婦の自己資産から返済する必要があります。
- **任意売却を行う**
自己資金と売却利益を合わせても残債を返済できない場合、金融機関に相談し、任意売却を検討します。
任意売却では、売却後の残債を一括ではなく分割で返済します。金融機関の了承が必要であり、売却価格の決定権も金融機関にあります。
離婚後の生活設計に向けて
離婚後の生活設計は、離婚の準備と同時に進めることが重要です。
離婚後の生活を設計する際には、以下のようなことを考えてみてください。
– 離婚後の働き方はどうする?
– どこに住む? 住居費は?
– 生活費はどれくらい掛かる?
– 子どもの教育費は?
財産分与のタイミングと方法
財産分与の手続きには、協議による財産分与、調停・審判による財産分与、離婚訴訟の付帯処分による財産分与の3つがあります。
財産分与の請求期間は、離婚の時から2年以内です。
新生活への移行:住み替えの計画
住み替えは、離婚後の新生活への移行において重要なステップです。
住み替えのタイミングや注意点などを事前に調査し、効率的な方法で住み替えを計画することが推奨されます。
また、60代以上の高齢者が住み替えをするメリットやその効率的な方法、予算についても考慮することが重要です。
離婚と住宅ローン:売却、財産分与、生活設計のポイント
離婚時に残る住宅ローンの取り扱いは、アンダーローンかオーバーローンかによって異なります。
アンダーローンの場合、売却によりローンを完済し、残金を財産分与できます。
オーバーローンの場合は売却後も返済が続きます。
自宅の名義確認と現在価値の把握が重要で、離婚による生活設計と移行も考慮しなければなりません。
財産分与は離婚から2年以内に請求可能で、名義変更や連帯保証人の問題も検討が必要です。