住宅を購入する際に多くの方が利用する住宅ローンは、長期間にわたる返済計画が一般的です。
しかし、経済状況の変化や将来に対する不安から、返済計画を見直したいと考える方も少なくありません。
その一つの選択肢が、住宅ローンの繰り上げ返済です。
本記事では、住宅ローン繰り上げ返済のメリット・デメリット、種類について詳しく解説します。
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの繰り上げ返済とは、予定されていた返済スケジュールよりも早く、住宅ローンの元金を返済することを指します。
繰り上げ返済によって、将来支払うべき利息の総額を減らし、返済期間の短縮が可能になります。
繰り上げ返済は、自身の経済状況の改善や住宅ローンの負担を早期に軽減したいと考えている人にとって心強い返済方法です。
繰り上げ返済を行うことで、毎月の返済額に変化がない場合でも、返済期間の短縮が可能となり、最終的な利息支払い額を減らすことができます。
また、一定の金額を繰り上げ返済することで、毎月の返済額の減少も可能ですが、その分、返済期間は変わりません。
このように、繰り上げ返済には、返済期間を短くするメリットがありますが、手元資金を多く使用するため、その後の生活費や急な出費への対応が難しくなる可能性もあります。
したがって、繰り上げ返済を行う際には、手元資金の状況や将来の計画を慎重に検討しましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済には2つの種類がある
住宅ローンの繰り上げ返済は、「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。
それぞれのメリット・デメリットを解説します。
期間短縮型
期間短縮型の繰り上げ返済は、返済期間を短縮させることにより、長期にわたる利息負担を減らす方法です。
この方法の最大の魅力は、総返済額の削減にあります。
期間短縮型のメリット
– 長期間にわたる支払利息を削減し、総返済額を減らすことが可能。
– 完済の時期が早まるため、早期の金融負担解放が期待できる。
期間短縮型のデメリット
– 毎月の返済額は変わらないため、短期的な家計への負担軽減は期待できない。
– 大きな一時金が必要になるため、手元資金が不足するリスクがある。
返済額軽減型
返済額軽減型の繰り上げ返済は、毎月の返済額を減らすことを目的としています。
これにより、月々の家計に余裕が生まれることが利点です。
返済額軽減型のメリット
– 毎月の返済額が減少するため、家計に余裕が生まれる。
– 短期的な負担感の軽減につながり、生活の質を保ちやすくなる。
返済額軽減型のデメリット
– 返済期間が変わらないため、期間短縮型に比べて利息負担の削減は少なくなる。
– 長期的に見た場合、総返済額の削減効果は限定的。
期間短縮型と返済額軽減型のシミュレーション
期間短縮型と返済額軽減型のシミュレーションを以下の条件で行います。
・当初借入金額: 3,000万円
・固定金利: 1.5%
・返済期間: 35年
・繰り上げ返済額: 300万円
・繰り上げ返済を行う時期: 返済開始から5年後
期間短縮型
繰り上げ返済なし | 300万円繰り上げ返済 | |
毎月返済額 | ¥91,855 | ¥91,855 |
返済期間 | 35年 | 25年11ヶ月 |
支払総額 | ¥38,579,239 | ¥33,693,788 |
利息支払い額 | ¥8,579,239 | ¥3,693,788 |
期間短縮型は繰り上げ返済なしと比較して、4,885,451円の返済額を減らすことができます。
繰り上げ返済により返済期間が大幅に短縮されることが顕著な違いです。
具体的には、期間短縮型では返済期間が35年から25年11ヶ月へと約9年短縮されます。
返済額軽減型
繰り上げ返済なし | 300万円繰り上げ返済 | |
毎月返済額 | ¥91,855 | ¥81,502 |
返済期間 | 35年 | 35年 |
総返済額 | ¥38,579,239 | ¥34,467,401 |
利息支払い額 | ¥8,579,239 | ¥4,467,401 |
繰り上げ返済なしと返済額軽減型を比較すると、返済額軽減型では毎月の返済負担が約10,353円軽減されます。
また、総返済額と利息支払い額を4,111,838円削減し、長期的な金利負担を減少させます。
住宅ローン繰り上げ返済の検討は手元資金とのバランス次第
住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際、重要なのは自身の手元資金とのバランスを見極めることです。
繰り上げ返済は、将来の利息負担を減らすという明確なメリットがありますが、その一方で、現在の生活や将来に向けた貯蓄計画に影響を与える可能性があります。
繰り上げ返済の資金は、毎月の給与以外にも、まとまったボーナスや副業収入・贈与・相続など様々な形で準備できる場合があります。
ただ、すぐに繰り上げ返済に充てるのではなく「毎日の生活やライフイベントなどの目的のために必要にならないか」という点を慎重に考えましょう。
例えば、子どもの教育費や家族の急な病気など、将来必要になる資金は多くあります。
繰り上げ返済を行うことで手元資金が減少すれば、もし急な出費が必要になった時に資金繰りに困ることも考えられます。
そのため、繰り上げ返済を行う際には、現在の貯蓄額、将来にわたっての収入見込み、必要とされる出費などを総合的に検討し、余裕を持った資金計画のもとで行うべきです。
このバランスを見極めることが、賢明な住宅ローン管理への第一歩となります。
繰り上げ返済を成功させるためには、手元資金を把握し、将来にわたる資金計画を立てることが重要です。
手元資金と将来の計画のバランスを見極め、繰り上げ返済によって得られるメリットを最大限に活かしましょう。
まとめ
住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際には、そのメリットとデメリットをしっかり理解し、手元資金と将来計画を総合的に考慮することが必要不可欠です。
以下のポイントをまとめます。
繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。
– 期間短縮型:利息負担を減らし、総返済額を削減しますが、手元資金が減少します。
– 返済額軽減型:毎月の返済額を減らせるものの、利息負担の削減効果は期間短縮型ほどではありません。
繰り上げ返済の検討には、以下の点を考慮してください。
– 繰り上げに使用する資金が、他の目的に必要にならないか。
– 子どもの教育費や家族の急な病気など、将来の必要資金を見越して計画を立てる。
– 急な出費に対応できるよう、手元に十分な資金を残す。
繰り上げ返済は自身の手元資金と将来計画に基づき、無理のない範囲で賢明な選択をしましょう。
手元資金と将来の計画を総合的に検討し、家計に負担をかけすぎないように注意が必要です。