住宅ローンを払えない方に向けた具体的な対策をご紹介します。
住宅ローンを契約した時の収入状況・支出状況は、いつまでも続くとは限りません。リストラ、転職、離婚などのきっかけにより、収支が悪化して住宅ローン返済が困難になる場合もあります。
返済できず自暴自棄になって事態を放置していると、やがて住宅は競売にかけられて強制的な立ち退きになる可能性もあります。
最悪の展開とならないよう、早めに行動を起こすことが大切です。
住宅ローンを払えなくなった時の対策
住宅ローンを返済にお困りの方は、以下にご紹介するいずれかの方法で解決を目指しましょう。
金融機関に相談する
住宅ローンの返済が困難になった場合、真っ先に相談すべき相手は、債権者たる金融機関です。先に弁護士や不動産会社の知恵をもらっておきたいという気持ちが起こるかもしれませんが、まずはお金を貸してくれた金融機関へ顔を出し、正直に状況を話すようにしましょう。
先に金融機関へ相談する理由は、道義的な意味に加えて、何らかの具体的な解決策を示してくれる可能性もあるからです。
例えば、返済の目途が立つまでの一定期間、ローンの返済額を減額してくれるかもしれません。あるいは、返済期間延長による月々の返済負担の軽減を提案してくれるかもしれません。
元本と利息を全額回収したい金融機関にとって、市場価格よりも安い相場となる競売は、なるべく避けたいところです。
ましてや債務者の自己破産で回収不能となることは、絶対に避けなければなりません。これらの事態を回避するため、金融機関は可能な限りの妥協案を提示してくれるはずです。
収入を増やす
住宅ローンの返済が困難となる理由は、大きく分けて、「収入減少」または「支出増加」のどちらかです。
もし「収入減少」が理由で住宅ローンの返済ができなくなった場合、収入を増やせる何らかの方法を模索してみましょう。
昨今、長引く不況を背景に、副業を認めるようになった企業は少なくありません。本業のかたわらで副業することは大変ですが、月に2万円程度の副業なら、さほど無理がないのではないでしょうか。
仮に、夫婦それぞれ月に2万円を副業で稼げば、月に合計4万円の収入増。月4万円の収入が増えれば、住宅ローンの問題を解消できるかもしれません。
支出を減らす
月々の支出を減らす努力もしてみましょう。
支出を節約する方法として食費の削減を検討する方もいますが、食費などの変動費は、さほど世帯支出を大きく圧迫する要因ではない、との見解もあります。
むしろ、世帯支出を圧迫する主な要因は固定費。特に、通信費や生命保険料、車の維持費などの固定費を見直してみましょう。
また、2023年現在では電気代やガス代などが高騰しています。ムダの光熱費がないかどうか、改めて生活スタイルを見直してみたほうが良いかもしれません。
借り換えをする
住宅ローンを組んだ時よりも低い金利の住宅ローンがあれば、借り換えによって返済負担を軽減させられる可能性があります。
ただし、単に返済中の住宅ローンよりも金利が低いという理由だけで借り換えした場合、労力の割にはさほど返済負担が軽減させられないこともあるので注意が必要です。借り換えを検討する場合には金利面だけではなく、残りの返済期間やローン残高など、総合的な視点から判断するようにしましょう。
なお、借り換えをする際には、新たな住宅ローンを組む金融機関から返済履歴を確認されます。「うっかり1回だけ返済を忘れていた」という程度の履歴なら問題ありませんが、2回以上に渡り滞納の履歴がある場合には、借り換え審査に不合格となる可能性があるでしょう。
任意売却する
収支を改善させたり借り換えを検討したりしても、住宅ローンの返済目途が全く立たないという方もいるでしょう。そのような方には、速やかに任意売却を検討するようおすすめします。
任意売却とは、金融機関から抵当権を外してもらった上で、一般市場から不動産を売却する活動のこと。通常は外してもらえない抵当権を外してもらうイレギュラーな売却方法なので、専門家を介した金融機関との交渉が必要です。
任意売却をせずに住宅ローンの滞納を放置し続けると、やがて金融機関から裁判所へ競売の申立てが行われますが、競売での売却価格に比べると、一般的に任意売却での売却価格のほうが高め。
金融機関にとっては競売より任意売却のほうが多くの債権を回収でき、債務者は多くの債務を返済できる形となるため、双方にとってメリットのある選択肢となります。
なお、金融機関が競売の申立てを行った後でも任意売却は可能ですが、タイムリミットは競売期日の前日まで。このタイムリミットまでに任意売却を成立させなければ、先に競売が成立してしまう可能性もあります。任意売却はスピード感を求められる活動なので、住宅ローンの滞納が始まったら速やかに専門家へ相談することが大切です。
リースバックで住み続ける
リースバックとは、自分の住宅を第三者に売却し、その第三者に家賃を払う形で引き続き同じ住宅に住み続ける手続きを言います。買主となる第三者は、主に不動産会社です。
リースバック成立後は、住宅ローンではなく家賃を払う形となりますが、生活拠点や生活スタイルは今までと変わりません。引越しする必要も、お子様を転校させる必要もなし。住宅を売却したことが周囲にバレることもありません。
なお、住宅の売却金はローンの返済に充てられるため、仮に残債が残ったとしても、以後の返済負担は大幅に軽くなります。
第三者へ任意売却した後、その第三者からリースバックで住宅を借りることも可能です。
債務整理する
住宅ローンだけではなく、カードローンや自動車ローンなど他のローンの返済も困難な状況となっている場合には、債務整理が選択肢となるでしょう。
債務整理が成立すれば、返済金利や返済元本の軽減、または返済の完全な免除が認められます。
なお、債務整理には大きく分けて「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類がありますが、これらのうち「個人再生」か「自己破産」が成立した場合、その情報が官報に掲載されることとなります。
住宅ローンを払えなくなった時のNG行動
住宅ローンを払えなくなった場合、次にご紹介する方法は事態を悪化させる恐れがあるので、原則としてNGと考えましょう。
カードローンやキャッシングで住宅ローンを返済する
住宅ローンの滞納分を埋めるためにカードローンやキャッシングを利用することは、おすすめできません。多くの場合、自転車操業で回しながら高い金利の借金が増えていくだけの結果となります。
次のボーナスでまとめて返済する
「次のボーナスで滞納分を一括返済しよう」と考える方がいるかもしれませんが、もし「次のボーナス」が半年後の場合、ボーナス支給日が到来する前に「期限の利益」が失われ、金融機関から住宅ローンの一括返済を求められます。一括返済に応じられなければ、金融機関は粛々と競売の申立てを行うことでしょう。
団体信用生命保険で一括返済する
一般的に、住宅ローンを契約する際には、金融機関からの求めにより団体信用生命保険に加入しています。契約者が死亡した場合には保険金から残債が支払われる、という内容の保険です。
中には、住宅ローンの滞納と生活苦が同時に家族を襲う事態となり、心を病んでしまう方がいるかもしれません。しかしながら、優先すべきは返済よりも生活の立て直し。大切なご家族の心に深い傷を残すような行為は、絶対にやめましょう。
なお、住宅ローンの滞納理由が所定の高度障害等の場合、団体信用生命保険の補償対象となります。改めて契約内容を確認してみましょう。
夜逃げする
人生をリセットするために夜逃げしたとしても、情報が溢れる現代社会において逃げ切れる可能性は限りなく低いでしょう。
誰かに追われているという不安の中で毎日を過ごすよりも、正当な手続きで人生をリセットし、前向きな気持ちで新たな日々を歩んでいきたいものです。
【まとめ】早急に金融機関や不動産会社へ相談を
住宅ローンを払えない場合の具体的な対策とNG行動についてご紹介しました。
どのような対策を選択するにしても、早急に行動しなければ住宅は競売にかけられます。
競売が成立すれば強制立ち退きとなり、家族は路頭に迷うかもしれません。
最悪の事態を招かないよう、まずは住宅ローンを契約している金融機関へ相談し、返済計画を見直してもらいましょう。
提示された返済計画が現実的でないと感じたら、不動産会社に相談して任意売却やリースバックを検討してみてはいかがでしょうか。