連帯保証人にも残債の支払責任がある
任意売却で住宅ローンの残債が残った場合、その支払責任は連帯保証人にも残り続けます。住宅ローンの返済と任意売却後の返済には様々な面において違いがありますが、連帯保証人の返済責任は変わらず残ることを、債務者本人も連帯保証人も理解しておきましょう。
連帯保証人には催告の抗弁権がない
保証人を大きく分けると「保証人」と「連帯保証人」の2種類がありますが、このうち「保証人」には催告の抗弁権が認められています。一方で「連帯保証人」には催告の抗弁権が認められていません。
催告の抗弁権とは
催告の抗弁権とは、保証人が債権者に対し、自分より先に債務者に請求するよう主張する権利のことです。連帯保証人には、この催告の抗弁権が認められていないため、もし債権者が「債務者よりも連帯保証人のほうがお金を持っていそうだ」などと判断した場合には、債務者より先に連帯保証人に返済請求できます。
なお、債務者に返済能力がなく、かつ連帯保証人にも返済能力がない場合、債務者だけではなく連帯保証人も共倒れする形で自己破産するケースがあります。
連帯保証人もブラックリストに載る可能性がある
もし債務者本人が住宅ローンの滞納した場合、連帯保証人に返済請求が入ります。ここで連帯保証人が代わりに返済できれば良いのですが、連帯保証人にも返済するための資力がなく滞納が続いた場合、債務者本人も連帯保証人も、共にブラックリストに情報が掲載されることとなります。
滞納に関するブラックリストの情報掲載期間は5年間。この間、新たなローンを組んだりクレジットカードを利用できなくなったりする可能性があるので、債務者本人も連帯保証人も、社会生活が制約されてしまうことでしょう。
債務者と離婚しても連帯保証人から外れることは難しい
例えばご主人が主債務者で奥様が連帯保証人となっている場合、もし離婚したとしても奥様は連帯保証人から外れることは難しいとされています。
ただし、住宅ローンの残りを一括返済して新たなローンを組み(借り換え)、その新たなローンの契約時に奥様以外の連帯保証人を設定すれば、奥様は連帯保証人から外れることができます。あくまでも、離婚後の借金に関する双方の協議が円滑に進むことが前提です。
個人再生や自己破産をしても連帯保証人には返済義務が残る
任意売却後の残債の返済が難しくなった場合、債務者に残された道は個人再生か自己破産となります。ただし、裁判所から個人再生や自己破産を認められた場合、債務者本人は借金が減免されることで身軽になりますが、連帯保証人には依然として返済義務が残り続けます。個人再生や自己破産を申請する際には、事前に連帯保証人に相談しておくことが望ましいでしょう。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所から借金の合計額を1/5に圧縮してもらう手続きのこと。圧縮された借金を3年以内に返済することが原則となります。住宅ローンの残債だけではなく、その他の借金も全て合算した金額の1/5まで圧縮できます。
自己破産とは
自己破産とは、裁判所から借金の額をゼロにしてもらう手続きのこと。住宅ローンの残債だけではなく、その他の借金も全てゼロにできます。ただし、ギャンブルや浪費を理由とした自己破産はできません。
連帯保証人と身元保証人の違い
連帯保証人に似た言葉に、身元保証人があります。同じ「保証人」という言葉が入りますが、それぞれは全く異なる立場です。違いを明確に理解しておきましょう。
連帯保証人とは
契約者と同じ返済責任を持つ人を、連帯保証人と言います。通常は契約者が返済できなくなった、代わりに連帯保証人に返済請求が入ることになりますが、連帯保証人には催告の抗弁権(先に契約者に返済請求をしてください、という権利)が認められていないため、理論上は債務者より先に(または債務者と同時に)連帯保証人に返済請求が入ることもありえます。
身元保証人とは
身元保証人とは、企業等で人材を採用する際に、その人材の経歴や身分に詐称がないことを証明する人のこと。もし経歴や身分に偽りがあることが事後的に判明したり、または本人が採用時の誓約内容に反する行為を行ったりしたことが原因で会社に損害が発生した場合、本人とあわせて身元保証人が損害の一部を賠償する形となります。
ただし多くの実務現場においては、身元保証人は損害賠償を目的に設定されるものではなく、本人に責任を持って仕事に取り組むよう自覚を促すことを目的に設定されているのが実情です。
連帯保証人と身元保証人の責任範囲の違い
連帯保証人の責任範囲は、契約者本人の責任範囲と同じです。契約者本人が1000万円のローンを返済できなくなれば、代わって連帯保証人が1000万円の返済義務を負うことになります。
一方で身元保証人の責任範囲は、本人がもたらした損害の一部とされています。本人が会社のお金を1000万円着服して全額浪費したとしても、通常、会社は身元保証人に対して1000万円全額の損害賠償を請求することはできません。