住宅ローンの返済が困難となり、あわせて他の借金返済も困難になってきた場合、現実的な選択肢として、住宅の任意売却や債務整理が浮上します。
任意売却と債務整理は、どちらも借金返済を楽にするための方法という点で共通していますが、それぞれの目的や手続きはまったく異なります。
いざ手続きを行う際には現状に照らして適切なほうを選択しましょう。
ここでは、任意売却と債務整理の違い、借金の状況に応じた適切な選択肢について解説しています。
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンの返済中に住宅を売却する手続きです。
一般的に、住宅ローンの返済中は住宅へ抵当権が設定されていますが、抵当権が設定されたままでは住宅を売却できません。
そのため任意売却する際には、金融機関や保証会社などの抵当権者と交渉し、特別に抵当権を外してもらう必要があります。
任意売却によって得た売却金は、そのまま債権者の返済へと充てられますが、売却金のみで借金を完済できない場合には、引き続き残債を債権者へと返済していく形になります。
債務整理とは
債務整理とは住宅ローンを含めたすべての借金返済が困難となった時にとる対処法です。内容の違いにより、大きく自己破産・任意整理・個人再生などがあります。
自己破産とは
自己破産とは裁判所での手続きを通じ、住宅ローンをふくめて現在あるすべての借金の返済の義務をなくしてもらう制度です。
借金を帳消しにしてもらう代わりに、所有している財産の大半を手放すことが条件となります。
比較的多くの財産を所有している人が申し立てる自己破産は「管財事件・少額管財」、財産をほとんど所有していない人が申し立てる自己破産を「同時廃止」として、それぞれを異なる手続きや自己負担額で自己破産が進められます。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所の手続きを通じ、住宅ローンをふくめて現在あるすべての借金を、最大20%~10%まで減額してもらう制度です。
減額後に残った借金は、現実的な長期計画で少しずつ返済していく形となります。
すべての借金を帳消しにしてもらうわけではありませんが、場合によっては住宅を手放さなくて良いこともあります。
任意整理とは
任意整理とは、債権者と債務者との話し合いにより金利を減免してもらう手続きです。裁判所を通さず、民間同士のみで交渉を行います。
債権者にとっては「元本だけでも返済される」という安心感があり、債務者にとっては「金利を減免してもらって返済が楽になる」というメリットがあります。
また、元本だけとは言え返済を続ける以上、住宅を売却して退去する必要がないことも債務者にとってのメリットでしょう。
任意整理の交渉には専門知識や経験が必要なことから、一般的には弁護士や司法書士の仲介により行われます。
任意売却と債務整理のどちらを選ぶべきか
現在の借金返済を楽にするという点で共通している任意売却と債務整理ですが、それぞれの手続きの目的はまったく異なります。
そのため、何を目的としているかにより、任意売却と債務整理の選択が分かれます。
任意売却の目的
任意売却の目的は、住宅ローン返済を楽にすることです。住宅ローンの返済が楽になれば生活を建て直せる人が、任意売却を選択します。
住宅ローン以外の借金がない方、または住宅ローン以外の借金が比較的少額な方に適した方法となります。
債務整理の目的
債務整理の目的は、すべての借金返済を楽にすることです。住宅ローンの返済が楽になったとしても生活再建できない人が、債務整理を選択します。
住宅ローンはもとより、その他の借金が多額にある方は、たとえ任意売却で住宅ローンの返済を楽にしたとしても問題は解決しません。そのような方が選択する方法が債務整理となります。
任意売却と自己破産の両方を同時に行うこともできる
住宅ローンとその他のローンで多額の借金を抱えている方は、任意売却や個人再生、任意整理などでは問題が解決しないかもしれません。
そのような方の現実的な選択肢は自己破産となりますが、自己破産は任意売却と同時に行うことも可能です。
自己破産する前に任意売却を行っておけば、売却金は債権者の返済の一部に充てられます。少しでも債権者に誠意を示すため、自己破産に先立って任意売却したほうが良いでしょう。
【まとめ】ポイントは「他の借金でも困っているかどうか」
基本的に住宅ローンの返済のみにお困りの方は、任意売却を選択します。
一方で、住宅ローンだけではなく他の借金の返済にもお困りの方は、債務整理を選択します。実際にどちらを選択すべきかは、専門家に相談の上で判断を仰ぎましょう。
なお、任意売却を選択する場合には住宅が競売される前に売却を完了させておく必要があります。タイムリミットのある手続きとなるため、住宅ローンの返済が難しいと感じたなら、一刻も早く不動産会社などの専門家へ相談しましょう。