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住宅ローンの名義人が死亡しても家は売却できる?

住宅ローンの名義人が返済中に死亡した場合、相続放棄等の手続きをしない限り、その住宅は相続人へ相続されますが、中には相続した住宅を売却したいと考える方もいるでしょう。

ここでは、名義人が死亡した後の住宅の売却方法について、状況別に解説しています。

どんな状況でも売却は可能だが方法が異なる

住宅ローンの名義人が返済中に死亡した場合、原則として住宅も住宅ローンも相続人へ相続されます。

この場合、もし名義人が団信(団体信用生命保険)へ加入していれば、原則として団信の保険金により住宅ローンの残債が支払われるため、相続人には返済義務が残りません。また、仮に名義人が団信へ加入していなかったとしても、相続人に十分な資力があって住宅ローンを返済できるなら、そのまま完済を目指していくことも可能です。

 

しかしながら、たとえ団信に加入していたとしても加入していなかったとしても、相続人の意向により、住宅を売却したいと考えるケースもあるでしょう。結論からいうと、いかなる事情があれ住宅を売却することは可能ですが、状況により売却の方法や手続きが異なります。

状況の違いによる適切な売却方法について見ていきましょう。

団信から全額保険金が支給される場合

住宅ローンの名義人が団信に加入中の場合には、住宅ローンの残債は団信の保険金で全額返済されるため、相続人は返済を完了した状態となり、かつ住宅は相続人のものとなります。

住宅ローンの返済が完了した自分の家であれば、通常の不動産売却と同様、不動産会社の仲介等を経て一般市場から住宅を売却できます。

ただし、売却するための前提として、名義変更手続きと抵当権抹消手続きを行っておかなければなりません。

名義変更手続き

住宅の名義が死亡した方の名義のままの場合、相続した方は自分の名義に変更した上で売却します(所有権移転登記手続き)。

住宅の名義変更手続きは煩雑なので、一般的には司法書士等の専門家に依頼する形となるでしょう。

抵当権抹消手続き

住宅を売却するにあたり、金融機関が設定している抵当権を抹消しなければなりません。

住宅ローンを返済すると抵当権が自動的に消滅すると思っている方や、金融機関が抵当権抹消手続きを行ってくれると思っている方もいるようですが、抵当権は債務者自身が住宅ローンを完済した際に行う手続きです。

抵当権を残した状態で住宅の売却活動に入ると、思わぬトラブルが生じることもあるため、忘れずに抵当権抹消手続きを行ってから不動産会社に売却の相談をしましょう。

 

 団信からの保険金支給に制限がある場合

住宅ローンの契約に際して団信に加入していたにも関わらず、団信から支給される保険金に制限が生じ、結果として相続人に住宅ローンの返済が残ってしまう場合もあります。

具体的には、「夫婦(親子)で住宅ローンを契約した場合」と「住宅ローンの滞納履歴がある場合」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

夫婦(親子)で住宅ローンを契約した場合

夫婦(親子)で住宅ローンを契約して団信に加入している方は、次の4つの例に該当していないかどうかを確認しましょう。

 

  1. 夫婦(親子)の収入を合算して「連帯保証型」の住宅ローンを組んだ

夫婦(親子)で合算した収入を基準にして住宅ローンを組んでいる方もいます。この契約形態を「収入合算契約」と言いますが、収入合算契約のうち「連帯保証型」を選んでいる場合、主たる収入のあるほうが債務者となり、従たる収入のあるほうが連帯保証人となります。

この二者のうち、団信に加入できるのは債務者のほうだけ。そのため、連帯保証人のほうが亡くなったとしても団信からの保険金は支給されず、引き続き住宅ローンは残り続ける形となります。

 

  1. 夫婦(親子)の収入を合算して「連帯債務型」の住宅ローンを組んだ

収入合算型契約のうち「連帯債務型」を選んでいる場合、主な収入のあるほうが「主たる債務者」となり、もう一方が「従たる債務者」となります。

この二者のうち、団信に加入できるのは主たる債務者だけ。従たる債務者が死亡しても団信の保険金は支給されないため、住宅ローンは残り続けます(フラット35には例外的な制度あり)。

 

  1. 夫婦(親子)でペアローンを組んだ

夫婦(親子)それぞれが別々で住宅ローンを契約し、双方の融資額を合算して1つの住宅を買う方法がペアローン。契約者が別々なので、それぞれが団信に加入できます。

ペアローンの状態なら、もし契約者が死亡すれば団信の保険金が支給されますが、死亡したほうの保険金しか支給されないため、住宅ローンは一部残り続ける形となります。

 

  1. 親子でリレーローンを組んだ

親子2世代にわたって返済する住宅ローンが親子リレーローン。一般的には、より長く返済できる子供のほうが団信に加入する形となるため、親が先に死亡した場合は団信の保険金がおりず、住宅ローンは残り続けることになります。

住宅ローンの滞納履歴がある場合

過去、住宅ローンの滞納をしたことがある場合、団信の契約が失効している可能性もあります。失効していれば、団信から保険金は受け取れません。

団信は生命保険の一種ですが、一般的に、その保険料は住宅ローンの返済金から充当されています。そのため、住宅ローンを滞納すると保険料も滞納した状態となり、その滞納を理由に団信が失効することもあります。

住宅ローンを滞納した場合、速やかに団信を契約した保険会社へ連絡し、失効させないための方法を確認しましょう。また、もし失効していた場合には、効力を復活させる方法を尋ね、速やかに適切な行動をとりましょう。

 

 団信に未加入の場合

団信に未加入の名義人が亡くなった場合、相続放棄等の手続きをしない限り、相続人には住宅ローンの返済義務も引き継がれます。

 

住宅ローンの返済義務を引き継いだ場合の住宅売却方法について、状況別に見ていきましょう。

自己資金で住宅ローンを返済した場合

住宅ローンが残った住宅を引き継いだとしても、相続人の自己資金で住宅ローンを返済すれば、特に問題なく住宅を売却できます。

 

自己資金がない場合でも、亡くなった方からの相続財産を返済に充てて住宅ローンを完済できる方もいるでしょう。

住宅ローンの返済が難しい場合

自己資金や相続財産のみでは住宅ローンの完済が困難な場合、アンダーローンかオーバーローンかにより、売却方法が異なります。

アンダーローンなら通常の売却が可能

アンダーローンとは、住宅を売却して得られる資金で住宅ローンを完済できる状態のこと。

 

アンダーローンの状態で売却すれば、債権者はその売却金から残債を全額回収できるため、売却に際して特に大きな問題は生じません。通常の不動産取引と同様、不動産会社に仲介してもらう形で一般市場から住宅を売却できます。

オーバーローンなら任意売却が可能

オーバーローンとは、住宅を売却して得られる資金でも住宅ローンを完済できない状態のこと。オーバーローンの状態で住宅を売却しても、債権者はその売却金から残債の全額を回収できません。そのため、債権者は抵当権を残す形で売却を阻止します(抵当権が残った状態で不動産は売却できません)。

 

このような状況の中で売却する特殊な手法が任意売却。任意売却の詳細は後述します。

【非推奨】競売によって売却することも可能

住宅ローンの返済が困難となり、かつオーバーローンで住宅を売却できない状況となった場合、そのまま滞納を続ければ、やがて債権者から裁判所へ住宅の競売が申し立てられます。

 

競売の申立てを受理した裁判所は、債務者に対して「競売開始決定通知書」を送付。裁判所による不動産の現況調査が行われたのち、粛々と競売の手続きが進行します。競売開札で買主が決まれば、債務者は住宅を退去しなければなりません。

 

任意売却等の行動を起こすことが億劫な方にとっては、事が自動的に進行する楽な手続きなので、競売も1つの選択肢になるでしょう。ただし、一般的に競売での売却金は任意売却より低くなる傾向があるため、以後の残債を少しでも減らしたい方には推奨できない方法です。

任意売却とは

任意売却とは、住宅ローンの滞納がある住宅について、債権者に抵当権を外してもらった上で住宅を売却する方法です。

 

住宅を売却する際には、その前提として抵当権を外しておかなければなりません。

アンダーローンの場合には、住宅の売却金でローンが完済されることから、売却と同時に債権者から抵当権を外してもらえます。

 

一方でオーバーローンの場合には、売却しても住宅ローンが完済されないため債権者から抵当権を外してもらえません。抵当権を外してもらえない以上、住宅を売却したくてもできない状況となります。

 

任意売却とは、オーバーローンの状態ながらも債権者に抵当権を外してもらい、一般市場から住宅を売却する特殊な手法。債権者・連帯債務者・連帯保証人など、住宅ローンの利害関係者全員の同意を得る必要がある高難度の売却手法なので、交渉力のある専門家のサポートが必須となります。

 

なお、たとえ任意売却が成立しても、オーバーローンである以上は多少の返済義務が残る形になります。ただし、売却金を返済に充てることで債務の総額を大幅に減らすことができるため、以後の返済負担はだいぶ軽減されることになるでしょう。

【まとめ】オーバーローンで売却したい場合には任意売却の検討を

団信からの保険金で住宅ローンの全額が返済されれば、当然問題なく住宅を売却できます。

また、団信からの保険金に制限がある場合や団信未加入の場合でも、相続した方が自己資金で住宅ローンを完済すれば、こちらも問題なく住宅を売却できます。

 

あるいは、たとえ自己資金での住宅ローンの完済が不可能だったとしても、アンダーローンならばスムーズに住宅の売却活動へ入れるでしょう。

 

問題はオーバーローンの場合。団信からの保険金に制限があったり、団信に未加入だったりした場合で、かつオーバーローンとなる場合には、競売の期日が訪れないうちに任意売却することがベターな選択肢となるでしょう。