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任意売却と税金の関係は?
譲渡所得税が課されないのは本当?

任意売却の際に発生する税金の種類

任意売却とは言え、一定の条件を満たしている売却の場合には、売却時に税金がかかります。

具体的には「譲渡所得税」「印紙税」「登録免許税」の3種類です。まずは、それぞれの税金の内容を簡単に見ていきましょう。

 

譲渡所得税・住民税

不動産の購入価格よりも売却価格が高かった場合には、その差益に対して譲渡所得税が課税されます。

また譲渡所得の金額を基準とし、あわせて住民税も課税されます。

なお譲渡所得税・住民税の税率は、当該不動産の所有期間に応じて次のように異なります。

 

– 不動産の所有期間が5年以下の場合

譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)

 

– 不動産の所有期間が5年超の場合

譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

 

もちろん、譲渡によってマイナスが生じた場合には、譲渡所得税も住民税も課税されることはありません。

 

印紙税

印紙税とは、各種契約書に貼付される収入印紙に対してかかる税金です。

不動産売買においては、「売買契約書」に収入印紙を添付する形で納税します。

印紙税の税額は不動産の売買価格によって異なりますが、例えば売買価格が「1000万円超5000万円以下」の場合には、印紙税は2万円となります(2022年7月現在は軽減税額適用中なので1万円)。

 

登録免許税

不動産を売却する際には抵当権を抹消する必要がありますが、この抹消手続きの際、登録免許税が課税されます。

 

抵当権抹消における登録免許税は1件あたり1千円ですが、やや手続きが専門的なことから手続きを司法書士に依頼するのが一般的。司法書士に支払う報酬の相場は1万~1万5千円ほどになります。

 

【特例】任意売却には譲渡所得税・住民税がかからない可能性がある(強制換価)

任意売却であれ通常の売却であれ、不動産売買で差益が出た場合には譲渡所得税・住民税がかかるのが原則です。

住民税が免除される可能性があります。

 

強制換価等における特例とは

強制換価等における特例とは、所得税法9条1項10号に定められている特例の一つ。

資力がなくなって債務を返済することが著しく困難な状態の場合、仮に競売で差益が生じたとしても譲渡所得税を課税しない、という規定です。

 

この規定の後段にある所得税法施行令では、競売に限らず、資力がなくなって売却せざるを得ない状況となった場合には、強制換価等における特例が適用されて譲渡所得税を課税しない、と解釈できる規定があります。

 

この規定の趣旨に従えば、任意売却でも譲渡所得税が課税されない可能性がある、という解釈も成り立つでしょう。

 

ただし、個々の任意売却のケースによっては、この規定が適用される場合もあれば、されない場合もあることが想定されます。

詳細については、案件ごとに専門家に確認する必要があるでしょう。

 

強制換価等における特例が適用される要件

参考までに、強制換価等における特例が適用される主な要件を3点ほど見ておきましょう。

 

– 本人の意思に基づかない強制的な譲渡、もしくは、それに類する譲渡

– 譲渡代金の全額が債務の返済に充てられ、譲渡者に直接的な利益がもたらされない

– 仮に課税しても徴収が困難

 

以上の全ての要件を満たした任意売却であれば、強制換価等における特例が適用されて譲渡所得税が課税されない可能性があります。

 

逆に譲渡損失が出た場合にはどうなる?

任意売却によって差益が出た場合には譲渡所得税や住民税が課税されるのが原則ですが、ケースによっては強制換価等における特例が適用され、非課税となる可能性があります。

 

一方で差益ではなく損失が出た場合には、当然ながら譲渡所得税も住民税も課税されませんが、それに加えて最長3年間にわたる所得の繰越控除を利用できるため減税効果を生むこともできます。

 

最長3年間の繰越控除とは

最長3年間の繰越控除とは、任意売却によって生じた損失を最長3年間にわたって、所得と相殺することができるという制度のこと。

 

所得と相殺して課税所得をゼロにすれば、その年の所得税や住民税が非課税となります。

 

例えば任意売却によって300万円の損失が生じたとします。

また、その損失が生じた年度の課税所得も300万円だったとします。

 

この課税所得300万円に対して損失の300万円をぶつければ、その年度の所得税・住民税はゼロになるということです。

 

なおかつ、損失を3年間にわたって繰越控除できるということなので、仮に損失が900万円で課税所得が300万円だった場合、損失を300万円×3年間に振り分ければ、3年間にわたって所得税・住民税をゼロにすることができます。

 

最長3年間の繰越控除を適用するための要件

最長3年間の繰越控除を適用するためには、主に次のような要件を満たしている必要があります。

 

– 売却した年の1月1日時点で、その不動産を合計5年超所有している

– 売買契約の前日において、償還期間10年以上の住宅ローンが残っている

– 住宅の売却価格より住宅ローンの残高のほうが高い

– 親子や夫婦などの特別な関係の人以外(第三者)に売却した

– その年の合計所得が3000万円を超えていない

他にもいくつかの要件があるので、実際に繰越控除を行う際には、全ての要件を満たしていることを確認する必要があります。

控除される額について

控除される額は、次の2つのうちの低いほうの金額となります。

– 住宅ローンの残高-売却価格…①

– 譲渡損失…②

 

例えば、①が1000万円で、②が2000万円の場合には、①が控除される金額となります。

なお、控除を受けるためには確定申告をする必要があります。

 

固定資産税・都市計画税・住民税を滞納していた場合

住宅ローンの返済が厳しい状態の中では、ともすると固定資産税・都市計画税・住民税なども滞納しているかもしれません。

もし、これらの税金の滞納を放置し続けた場合、行政はどのような措置を取るのでしょうか?

 

3~5万円ずつの分割払いを要求される

固定資産税・都市計画税・住民税などの滞納額にもよりますが、多くの場合、月々3~5万円ずつの分割払いを役所から要求されます。

しかし、任意売却に至った経緯は住宅ローンの滞納であり、住宅ローンの滞納をするほどの状況であれば、月々3~5万円のお金を捻出することは非常に難しいでしょう。

現実的に分割払いに対応できる人は少数派かもしれません。

 

分割払いができなければ差し押さえになる可能性がある

国民には納税の義務がある以上、納税者にいかなる事情があろうとも、役所は強制的に納税を迫るしかありません。

 

分割払いにも応じてもらえないようであれば、最終的な手段として、役所は差し押さえをするしかないでしょう。

 

差し押さえの対象は、自宅だけではなく、銀行預金や勤務先の給与も含まれます。給与が差し押さえられれば、税金を滞納していることが勤務先に知られてしまいます。

 

差し押さえを避けるためには誠意をもって役所に相談する

税金の分割払いはできない状況の中、どうしても差し押さえは避けたいという方は、役所の窓口で誠意をもって相談することが大事です。

役所は、困っている市民の骨の髄までしゃぶり取るような機関ではありません。

むしろ、どのような状況の市民であれ、少しでも文化的な生活を送れるようサポートするための機関です。

誠意をもって相談すれば、差し押さえにならないよう現実的な方法を示してくれることでしょう。

最も避けるべき行為は、役所からの各種連絡を放置することです。未納税者から何らかのリアクションがなければ、役所は差し押さえせざるを得ないことを理解しておきましょう。