住宅ローンの返済中にリストラや倒産、病気・ケガなど、何らかの影響で失業した場合、以後の返済が大変困難になります。早急に再就職し、失業前と同じ程度の収入を得られれば良いのですが、現実的には困難を伴うことも多いでしょう。
ここでは、失業によって住宅ローンを払えない状態になった方に向け、いくつかの有効な対処法をご紹介します。自暴自棄にならず、冷静に淡々と事を進めていくことが大切です。
【対処法1】失業手当の受給手続きを行う
一定の条件に該当していれば、ハローワークで手続きをすることにより失業手当の給付を受けられます。失業前と同じ金額の手当をもらえるわけではありませんが、生活費や住宅ローン返済の一助となることは確か。手続きにやや手間はかかりますが、時間を作って必ず受給手続きを行うようにしましょう。
失業手当の受給手続きの流れ
- 辞めた会社から離職票をもらう
- ハローワークに赴いて求職票を作成する
- 待機期間(7日間)
- ハローワークの説明会に参加する
- 失業認定を受ける
自己都合で失業した場合には、原則として「7日間の待機期間+2か月」の期間を経て失業手当の支給が始まります。また、会社都合で失業した場合には、原則として「7日間の待機期間」の後から失業手当の支給が始まります。
失業手当の支給条件については人により異なるため、詳細についてはハローワークにて個別で相談してみてください。
【対処法2】加入中の保険の内容を確認する
加入中の保険によっては、失業中の住宅ローン返済や生活費などの一助となる保険金を受給できるかもしれません。改めて、契約中の保険の中身を確認してみましょう。
団信の保険金受給条件に該当するかどうかを確認する
銀行で住宅ローンを契約する際、一般的には銀行側から団信(団体信用生命保険)への加入を契約条件として求められます。団信とは、住宅ローン返済中に契約者が万が一の事態で返済不能となった場合、代わって保険金で残債を完済する保険。保険金の受給で住宅ローンが完済されれば、以後、契約者は住宅ローンを返済する必要がありません。
保険金の支給条件には契約内容により異なりますが、多くの場合、八大疾病や契約者の死亡などに該当すれは保険金が支給されます。
ただし、八大疾病の場合、「診断書」だけではなく「就業不能な状態を証明すること」も保険金の支給条件とされることがあるので、受給申請に際しては契約内容をよく確認するようにしましょう。
団信以外の保険の契約内容を確認する
団信以外にも、収入保障保険や就業不能保険、住宅ローン返済支援保険などに加入している方は、失業時に保険金を受給できる可能性があります。
– 収入保障保険
被保険者が死亡した場合、または高度障害状態となった場合、保険期間が終了するまで毎月一定額の死亡保険金を年金形式で受け取れる保険です。
– 就業不能保険
病気やケガなどを理由に長期的な療養が必要となった場合を想定し、その減収に備える保険です。
– 住宅ローン返済支援保険
病気やケガなどを理由に減収した場合を想定し、住宅ローンの返済に備える保険です。
原則として団信は、病気やケガ等で「就業不能」となった場合しか保険金が支給されません。病気やケガ等で「減収」した場合にも保険金を受給するためには、団信以外の保険にも加入する必要があるでしょう。
【対処法3】銀行に返済の相談をする
失業して住宅ローンの返済に不安を感じた際には、ハローワーク等の手続きとあわせて、早めに住宅ローンを契約している銀行へ相談しましょう。
失業直後は返済できている状態だったとしても、長期的に失業が続けば返済できなくなる恐れがあります。目先だけを見ず、長期的な視野で返済リスクが想定された場合には、滞納前でも構わないので早急に銀行へ状況を伝えましょう。
なお、銀行との直接交渉によっては、主に次のような返済条件の変更を提案されることがあります。これらの提案で状況を乗り越えられるのであれば安心でしょう。
– 返済期間を長くし、月々の返済額を少なくする
– 子供の教育費が掛かる間の返済額を少なくする
– ボーナス払いをやめて、月々均等な返済額にする
【対処法4】家を売却する
ここまでにご紹介した対処法で状況を打開することが難しい場合、やむを得ない手段として、家の売却を考える必要があるかもれません。
家を売却する主な2つの方法を見ていきましょう。
通常の売却
住宅ローン返済中の家を売却する際、銀行に抵当権を外してもらう必要がありますが、仮にアンダーローンの状態であれば銀行は抵当権を外してくれるので、何ら問題なく不動産市場を通じた通常の売却ができます。
ちなみにアンダーローンとは、家の売却金が住宅ローンの残債額を上回る状態のこと。逆に、家の売却金が住宅ローンの残債額を下回る状態のことをオーバーローンと言いますが、仮にオーバーローンだったとしても自己資金を加えて残債を全額返済できるならば、アンダーローンの場合と同様に問題なく家を売却できます。
任意売却
家の売却金が住宅ローンの残債を下回るオーバーローンの状態で、かつ自己資金等を加えてもローンを完済できない場合、銀行は抵当権を外してくれません。抵当権を外してくれない以上、家の持ち主は不動産市場から家を通常売却できない状態となります。
このような状態の中で例外的に家を売る方法が任意売却。銀行などの債権者に抵当権を外してもらうよう交渉し、実際に抵当権を外してもらった上で通常と同じ売却を行う方法となります。
なお、仮に任意売却が成立したとしても、もともとオーバーローンの状態である以上、債権者に返済すべき債務が一部残ることは避けられません。ただし、任意売却前の状態に比べれば、残債総額も月々の返済額も大幅に楽になることも事実。任意売却は、生活を立て直す有効なきっかけとなるでしょう。
任意売却する際の注意点
住宅ローンの滞納が続くと、やがて債権者は裁判所へ競売の申立を行うことになるでしょう。
競売の申立が行われれば、概ね6~10か月ほどで家は落札される可能性があります。落札後は家の名義が買主へ変更となるため、以後、債務者たる売主は任意売却を行えません。
一般的に、競売による落札価格は任意売却の価格より安いと言われているため、売却後の返済を考えれば、なるべく競売を避けて任意売却を選択するべきでしょう。任意売却を行う場合には、競売のタイムリミットから逆算し、なるべく早い段階で専門業者を相談するようおすすめします。
【まとめ】「オーバーローン+長期的な失業」なら任意売却の検討を
失業によって住宅ローンが支払えなくなった場合の主な対処法をご紹介しました。
家は、家族にとって思い出の詰まった大事な資産。失業という不測の事態が生じたとしても、失業保険や加入中の保険、銀行への相談などを通じ、まずは家を手放さない方策を探るべきでしょう。
しかしながら、現実として家を手放さなければならない局面が訪れたならば、やむを得ない対処法として家の売却を考えなければならないかもしれません。
もし家を売却する場合、通常の売却になるか任意売却になるかはケースバイケースです。ただし、仮にオーバーローンが想定され、かつ長期的な失業が予想されるならば、任意売却になる可能性が高いでしょう。
任意売却は、早めに行動したほうが相対的に良い結果となることも少なくありません。現実的な状況に鑑み、必要に応じて専門家へ相談するようおすすめします。