住宅ローンの滞納で裁判になる?ならない?
裁判=提訴されることはあるのか
住宅ローンを滞納し続けた場合、債務者や裁判所から様々な通知が届くことになります。初めての経験であれば、それらの一つ一つの通知に対し、不安や焦りを抱くことになるかもしれません。
自宅に届くそれらのどの通知も、基本的には返済のタイムリミットや競売のタイムリミットを暗示するような内容なので、ご自身やご家族の生活のことを考えれば、不安や焦りを抱くことも無理はないでしょう。ただし、それらの通知は、テレビドラマで見るような「法廷での裁判」や「出廷」を勧告するものではありません。
通知の内容を軽視することはもちろん禁物ですが、それら一連の通知は、いわば「住宅ローンの返済に困っている人に対する事務手続きのお知らせ」であるとも解釈できます。何らかの通知が届いた場合、まずはそのように解釈し、心を落ち着けた上で一つ一つの通知の内容によく目を通してみましょう。
通知を故意に無視し、退去の強制執行に対し物理的抵抗を示して居座る、などといった極めて悪質な例を除き、「裁判=提訴」に発展することはありません。通知が届いた場合には、債権者に対して誠実な対応を示すことが大切です。
滞納が続くと裁判所から来る通知書とは
住宅ローンの滞納が続くと、債務者や裁判所から様々な通知が届きます。それら一連の通知の中に、「担保不動産競売開始決定通知書」というものがあります。債権者からのアクションとしては重要な節目となる通知なので、その意味・内容をよく理解しておきましょう。
「担保不動産競売開始決定通知書」とは、簡単に言えば「あなたの不動産を競売にかけることにしました」という裁判所からのお知らせです。債権者(保証会社)が裁判所に担保不動産の競売を申し立て、その申し立てを裁判所が認めれば、裁判所は債務者に対して「担保不動産競売開始決定通知書」を送ります。
「担保不動産競売開始決定通知書」には、主に次のような内容が記載されています。
・担保不動産の競売手続きの開始が決定したこと
・競売手続きが開始されたら、債務者は評価人(不動産鑑定士)や執行官等の調査に協力する義務があること
・悪質な競売ブローカーの介入に注意すること
・競売手続きに関する不明点は裁判所や弁護士に相談すること
なお、「担保不動産競売開始決定通知書」が債務者のもとへ届くタイミングは、住宅ローンの滞納が始まってから、おおむね6~9か月たった頃です。債務者の意向によっては、それよりも早く通知が届くこともあります。
裁判所から通知が来るまでと来た後の流れ
住宅ローンが滞納されると、まずは債権者である金融機関から、「ご入金のお願い」といった類の通知が届きます。通知には、期日までに引き落としができなかったこと、早急に入金して欲しいこと、特殊な事情がある場合には相談して欲しいこと等の内容が記載されています。
この通知が届いた後にも滞納を続けると、以降に記載する一連の通知・手続きに入ることになります。
滞納2ヶ月:督促状が届く
滞納から2ヶ月ほどたつと、金融機関から督促状が届きます。督促状に記載されている主な内容は次の通りです。
・○月分から返済が滞っていること
・滞納分の合計金額
・引き続き滞納になった場合には「期限の利益」が失われる可能性があること
・「期限の利益」が失われると一括返済を請求することになること
・一括返済できない場合には保証会社による代位弁済が行われること
・代位弁済後の返済金利が上がること
・代位弁済後に一括返済できない場合には競売の申し立てが行われること
滞納3~4ヶ月:催告書が届く
督促状が届いてからも滞納が続いた場合、滞納が始まってから3~4ヶ月後を目安に金融機関から催告書が届きます。催告書に記載されている内容は督促状とほぼ同じですが、文面の文言が督促状よりも厳しい印象となります。金融機関からの「最後通告」とも言われる催告書なので、その厳しい文言を目にし、不安や焦りを感じる人も多いでしょう。
なお、この時点で滞納分を返済すれば、次の流れ(期限の利益の喪失)に進むことはありません。この段階で可能な限り返済の方法を探すか、または誠意をもって金融機関に相談するようにしたいものです。
滞納3~6ヶ月:期限の利益を喪失する
催告書が届いてからも滞納が続いた場合、滞納が始まってから3~6ヶ月後を目安に、金融機関から債務者へ「期限の利益の喪失予告」に関する通知が届きます。
期限の利益とは、当初の契約で取り決めた期限(35年など)の間、債務者が借金を分割で返済できる権利のことを言います。この権利が与えられる代償として、債務者は債権者(金融機関)に対し金利を支払います。
期限の利益は、金融機関に申請すれば誰でも与えられるものではありません。金融機関が申請者の収入や属性等を調査し、「この人なら滞納なくローンを完済してくれるはずだ」という信頼感が生まれたときに与えられるものです。
住宅ローンの滞納が続くと、金融機関が債務者に抱いていた信頼感が崩れます。信頼感が崩れるということは、期限の利益の前提が崩れるということでもあります。結果、債務者は期限の利益を失って致し方のない状況となります。
「期限の利益の喪失予告」の内容に応じず、最終的に期限の利益を失った場合には、以後、借金の分割返済が認められず、一括返済するしか道が残されていない形となります。
滞納7~8ヶ月:代位弁済通知書が届く
期限の利益を喪失した後、滞納が始まってから7~8ヶ月を目安に、保証会社から「代位弁済通知書」が届きます。
代位弁済通知書とは、簡単に言えば「あなたに代わって保証会社がローンの残債を一括返済しました」という内容の通知です。保証会社は債務者のローン返済を肩代わりした形となるため、以後は保証会社から債務者に対し返済の請求が行われます。
期限の利益を喪失した債務者は、保証会社に対して借金を一括返済しなければなりません。しかしながら、この段階における債務者には、借金を一括返済できる経済的余力が残っていないことが大半です。
一括返済がなされない以上、保証会社は肩代わりした借金の回収を行うため、やむを得ず裁判所に競売の申し立てを行うことになります。
滞納9ヶ月:競売開始決定通知書が届く
保証会社が裁判所に競売の申し立てを行った後、滞納が始まってから約9ヶ月を目安に、裁判所から「競売開始決定通知書」が届きます。前述した通り、競売開始決定通知書とは「あなたの不動産を競売にかけることにしました」という裁判所からの通知です。通知に記載されている主な内容は前述をご参照ください。
滞納9~10ヶ月:現況調査通知が届く
競売開始決定通知書が届いた後、滞納が始まってから9~10ヶ月を目安に、裁判所から「現況調査通知」が届きます。
競売を行うにあたって事前に不動産鑑定士や裁判所の執行官が債務者宅を訪問(現況調査)し、様々な情報収集を行うことになりますが、この情報収集の内容や日時などが記載された通知が現況調査通知です。
現況調査の当日は、執行官等による様々な聞き取り調査が行われます。債務者への聞き取り調査はもとより、同居する家族がいる場合には、その家族への聞き取り調査も行われます。あわせて、物件の写真撮影や周辺環境などの調査、近隣住民への聞き取り調査も行われます。
なお、債務者には現況調査を拒む権利がありません。現況調査の当日、仮に不在にしたり居留守を使ったりしても、執行官は鍵業者を呼んで強制的に鍵を開け、粛々と調査を進めます。
滞納11~13ヶ月:期間入札開始決定通知が届く
現況調査が行われた後、滞納が始まってから11~13ヶ月を目安に、裁判所から「期間入札開始決定通知書」が届きます。
期間入札開始決定通知書とは、競売の入札開始日から入札終了日の日程、および入札開札日が記載された通知です。入札最終日の段階で最高額を示した人が落札者となり、落札者が入金を完了させれば、不動産の所有権が債務者から落札者へと移動します。
裁判所からの通知が来る前後にできる対策
住宅ローンを滞納しても裁判所に出廷して裁判になるケースはほとんどないこと、督促状が届いてからの流れなどについて詳しく解説しました。
一括返済の請求が来たとしても、滞納が続いている状況の中で一括返済できる人はごくまれです。もし競売にかけられれば、ご自宅は不動産相場の50~70%程度の価格での売却となることが一般的なので、大きな残債が残ってしまうことは避けられないでしょう。
債務者にとって少しでも有利な価格でご自宅を売却する方法として「任意売却」があります。
任意売却とは、債権者から抵当権の抹消の約束を得て不動産を売却する方法で、競売に比べて高い価格でご自宅を売却できるのが一般的です。ご自宅を手放した後の生活を少しでも楽にするにはとても有効な方法の一つと考えて良いでしょう。
当社ECエンタープライズは、住宅ローンの滞納にお困りの方々に向け、任意売却の仲介を専門的に行っている企業になります。これまで多くのお客様の任意売却に関するアドバイスや交渉のほか、お客様の生活再建についてもサポートを重ねて参りました。
任意売却の成立には一定の時間が必要ですが、裁判所の執行官が現況調査に訪れた後でも、まだ間に合う可能性があります。一括返済や競売に関するお知らせを前にお悩みの方は、ぜひ当社ECエンタープライズまで、お気軽にご相談ください。