賃貸中の投資用物件でも任意売却は可能です。入居者がいる状態のまま売却し、オーナーチェンジ物件として扱う方法や、入居者に立ち退いてもらって売却する方法があります。
また、サブリース物件の任意売却も可能ですが注意点が2点あります。なお、任意売却後に残ったアパートローンは無担保債権となり、計画的な返済が重要です。
投資用物件任意売却については債権者や関係者の了承を得た後に売却活動を行い、売買代金配分表を提出し、最終的に売買契約と物件の引き渡しをすることで完了します。
賃貸中の投資用物件でも任意売却ができる
自分が住んでいる家はもちろんですが、自分が経営しているマンション・アパートなどでも任意売却は可能です。
すでに入居者がいるマンションやアパートの場合、入居者がいる状態のまま任意売却する方法と、入居者に立ち退いてもらってから任意売却する方法の2種類があります。
入居者がいる状態のまま任意売却を行う場合
入居者がいる状態のまま任意売却を行う場合、入居者にとっては「大家がかわる」ことになるものの、家賃などの入居条件はそのままです。
少なくとも現在の契約期間中は、それまでと同じ条件の中で住み続けられるので、たとえ任意売却が行われたとしても入居者に大きな影響はないでしょう。
なお、入居者はかわらず大家だけかわる物件のことを、オーナーチェンジ物件と言います。
入居者に立ち退いてもらってから任意売却を行う場合
入居者に立ち退いてもらってから任意売却を行うためには、当然ながら入居者へ立ち退きをお願いする必要があります。
入居者の自己都合で立ち退くわけではないため、一般的には入居者へ立退料を支払って退去してもらう形となります。
なお、大家の一方的な都合による立退料の相場は、家賃の6~10か月分ほどと、決して安くありません。
また、もし入居者が立ち退きを拒否し続けた場合には、競売の期限までに任意売却が成立しないリスクもあります。
入居者を買主として任意売却する方法もある
マンションやアパートを任意売却する相手方として、現在の入居者に声がけしてみる方法もあります。
任意売却の対象が投資用物件(マンション・アパート)である以上、売却活動では不動産投資家を買主として想定します。
しかし、もし現在の入居者がちょうど物件の購入を検討しているタイミングであれば、入居者を買主とした任意売却が成立する可能性もあります。
売主側にとっては、任意売却がスムーズに成立することや、高額な立ち退き料を支払わなくて済むことなどがメリット。
一方で買主側にとっては、今まで住み慣れた物件を自己所有できることや、相場よりやや安い価格で物件を購入できる可能性もあることなどがメリットになるでしょう。任意売却の売買価格は相場より安くなる傾向があるためです。
ただし、入居者を買主として任意売却を成立させるためには、大前提として、入居者にその物件を購入する意思と経済的余力が必要です。
入居者に打診してみる価値はありますが、大きな期待を抱かないほうが無難でしょう。
サブリース物件でも任意売却できる
いわゆるサブリース契約が生きている物件であっても、任意売却を行うことは可能です。
ただし、サブリース契約がある状態で任意売却する場合には、次の2点に注意する必要があります。
サブリース業者の同意が必要となる
サブリース契約は「現在の物件所有者」とサブリース業者との間で結ばれている契約です。
任意売却が行われた場合、一般的にサブリース契約は「次の物件所有者」へと引き継がれます。
ただし、当初のサブリース契約の中に「物件が売却されたら次の所有者に契約を引き継ぐ」という特約がない場合、売主・買主・サブリース業者の三者で協議の上、サブリース業者から契約引き継ぎの同意を得る必要が生じます。
サブリース契約がついていることで価格が下がることもある
サブリース契約のついた物件の取り扱いや用途は、一般的に物件の所有者ではなく、サブリース業者が主導権を握ります。
所有者が自由に物件を使えなくなる一面があるため、任意売却では買主からの交渉により価格を下げられる可能性があるでしょう。
任意売却後に残ったアパートローンは無担保債権
一般的な不動産売買では、ローンを完済しなければ売却活動ができないため、売却後に残債が残ることはありません。
一方で任意売却では、ローンを完済する前に売却活動を行うため、売却金でローンを完済できない場合には残債が残ります。
任意売却を行う際には、事前に債権者から抵当権を抹消してもらっているので、任意売却後に残った残債にも抵当権がついていません。
このように、抵当権がついていない債権のことを「無担保債権」と言います。
なお、担保がついていないことを理由に残債の返済を先延ばしにしていると、債権者から給与差し押さえなどの処置を取られることがあります。
無担保債権でも、きちんと計画的に返済していくことが大切です。
投資用物件を任意売却する流れ
投資用物件を任意売却する流れを簡単に見ておきましょう。
1.債権者や関係者から了承を得る
任意売却を仲介する不動産会社や弁護士などの協力のもと、ローンの債権者に任意売却の交渉をします。
同じ物件に複数の債権者がいる場合には、すべての債権者から任意売却の了承を得なければなりません。
また、ローンに連帯保証人や共同名義人などの関係者からも了承を得ておく必要があります。
2.売却活動を行う
不動産会社が仲介する形で、対象物件の売却活動を行います。
不動産会社が買主となって任意売却が成立する例もあります。
3.債権者に売買代金配分表を提出する
債権者が複数いる場合、返済の優先順位を記載した売買代金配分表を作成し、各債権者に提出します。
優先順位が低い債権者にも一定の金額が返済されるよう、仮に売却益がなくても「担保解除料」という名目で売却金の一部を差し入れます。
事前に担保解除料を差し入れる旨を伝えておかなければ、下位順位の債権者が任意売却を拒否する可能性もあるので要注意です。
4.売買契約
買主と売買契約を結んで物件を引き渡し、任意売却が完了します。