相続した実家の維持・管理に頭を悩ます
今から15年前に実家を相続したN様。相続人はN様お一人です。実家の近くには頼れる親類がおらず、家の維持・管理に悩んでおられました。とある夏のお盆に、お墓参りもかねて、実家へ帰省されました。ふと見た実家のポストの中に、大手ハウスメーカーのパンフレットが入っていました。何気なくパンフレットを取り内容を見ると、N様の悩みが解決されるだけでなく、収入を得ることができると記載されていました。N様にとってこの内容は、大変魅力的に感じたそうです。
負の遺産が収入を生む
お盆明け、関東の自宅から、大手ハウスメーカーへ問合せをされました。すると、営業担当者が、説明のために、関東まで来てくれたのです。担当者の説明としては、実家を解体し、銀行で借入をしたうえで、2階建のアパートを建築し、家賃収入を得るというものでした。また、ハウスメーカーが建物を借上げし、35年間家賃保証をするので、空室の心配はなく、返済も安心できると言うのです。N様にとって負の財産だったものが、アパートになり収益を生むなど思いもしませんでした。N様は即決でアパート建築を決めました。しかし、この10数年後、思いもよらないことになるのです。
親切・丁寧なハウスメーカー社員
営業担当者は、非常に丁寧な対応で信頼におけるとN様は関心されていました。打ち合わせは電話やメールで行ったそうです。契約書などの書類のやり取りは郵送で行います。担当者を信じていればすべてがうまく進むと信じておられました。そして、銀行のローン審査が通り、実家の解体から新築工事まで滞りなく進み、ついに建物が完成しました。建物が完成した際には、N様も現場にこられ、式典を開かれました。完成後間もなく、新築アパートは満室になり、N様も契約通りの家賃収入を得ます。そんな順風満帆な状況は約10年続いたそうです。
保証家賃の見直し
アパート経営を開始して約10年後、N様のもとに大手ハウスメーカーから、突然手紙が届きます。内容は「家賃保証の見直し」について。内容としては、「保証家賃を下げる、承諾がない場合には借上契約を打ち切る」とのことでした。大変驚かれたN様は、新築時の担当者へ連絡を入れましたが、すでに退職をしていました。あまりにも一方的な通知に憤慨されたN様は、借上契約の打ち切りを検討されましたが、どうやら現地のアパートには多数の空室があることを知り、なくなく保証家賃の値下げに応じられました。
かさむ経費・下がる家賃
築10年を過ぎてくると、ハウスメーカーからはアパート室内の設備の入替や内外装のリフォームの要求があります。新築時とは違い、入居促進のために、ハウスメーカーも必死です。当然、承諾が無ければ保証家賃の値下げや、借上契約の打ち切りを通知をしてきます。N様は納得が出来ないのですが、ハウスメーカーとの借上契約にも、そういった取決めがなされています。借上契約の解除に恐れて、しぶしぶ承諾をされます。
築年数の経過とともに家賃収入が下がり、新築時に提案を受けていたプランから約70%まで収入が落ち込んでいます。対して毎月の借入金の返済額は、新築時から変わらない金額です。その他、建物の管理費や修繕費、税金などの支払うと収支は予想以上に悪くなります。こんな状態に陥った物件を所有することに不安を感じたN様は、売却を検討され、当社へお問合せをされました。
売却査定
当社はまずN様のアパートの調査を行いました。物件そのものはもちろん、周辺物件の空室状況や募集家賃、アパート周辺の生活環境などを確認します。特に周辺の賃貸状況は重要です。今回の場合、周辺にはN様のアパートより築の新しい物件が多数あります。また、これから建築される物件もあるとのことでした。今後、さらなる家賃の減少の可能性があります。そのことをN様にお伝えしたところ、「賃貸経営に疲れた。やはり物件を処分したい」と。N様の借入の残債は約4,600万円ですが、売却査定の結果は4,000万円です。残債との差額は約600万円です。足りない資金については、N様は自己資金を充当されます。販売開始後、県内在住の投資家が購入され、無事に売却することが出来ました。
売却後のN様
売却後、N様はアパートのストレスから解放されたと喜んでおられましたが、「大手ハウスメーカーが許せないと」話しておられました。しかし、それと同時にアパートを建てる前に、冷静にもっと思案するべきだったと反省もされていました。