住宅ローンや借入金の返済中に突然、一括返済を求められる事態に直面したらどう対応すべきでしょうか?
このようなリスクを回避するために重要なのが「期限の利益」の役割です。
返済期限までの猶予を与えるこの権利が、もし失われた場合、債務者にはどのような影響が及ぶのか。
本記事では、期限の利益の基本や、喪失のリスク、対処法について詳しく解説します。
期限の利益とは?
期限の利益とは、債務者があらかじめ定められた返済期限までの間、債務を履行しなくてよい権利を指します。
例えば、住宅ローンで「35年の返済期間」が設定されていれば、債務者はその期間中、分割で返済することができます。
ただし、期限の利益は無条件で保証されるものではありません。
返済の滞納や契約違反が発生した場合、債権者は期限の利益を無効にし、一括返済を請求することが可能です。
期限の利益は、ローン契約や分割払いの契約において一般的に利用されているため、債務の管理や適切な返済計画の策定に利用されます。
契約内容を確認し、適切に期限の利益を維持することが、債務者にとって大切なポイントとなります。
期限の利益の喪失とは
期限の利益が喪失する状況
期限の利益を喪失する主なケースには、返済の遅延や債務者の信用状態の悪化が含まれます。
例えば、住宅ローンの滞納や債務者が自己破産手続きを開始した場合が該当します。また、担保物件が損傷した場合や債務者が契約上の義務を果たさなかった場合も期限の利益を失う可能性があります。
このような状態になると、債権者から残りの債務を一括で返済するよう求められるリスクが生じます。
例えば、600万円借り「毎月5万円ずつ返済、支払期限を10年とする」と契約した場合。返済が何ヶ月も滞り期限の利益が喪失することになると、その時点で借入額を一括で債権者(金融機関)から請求されます。
債権者(金融機関)は即座に全額返済を求めることが可能となり、債務者に大きな負担が生じます。
喪失後に債権者(金融機関)が取る行動
期限の利益を喪失した場合、債権者(金融機関)は債務者に対して全額の一括返済を請求する権利を持ちます。
請求額は、債務者が返済期限まで猶予されていた分も含まれ、即時に返済を求められる形となります。また、返済がなされない場合、債権者は法的措置を取ることが一般的です。
具体的には、担保物件の差し押さえや競売手続きを進め、未回収の債権を回収しようとすることが考えられます。
民法で定められた期限の利益の喪失事由
民法137条に基づく喪失事由
民法137条では、債務者が以下の状況に陥った場合、期限の利益を喪失すると定められています。
1. 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2. 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
3. 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
これらの事由は、債権者の債権回収が困難になるリスクが高いため、法的に期限の利益を喪失させる理由とされています。
喪失後、債権者は直ちに返済を請求できる状態となります。
引用元:e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
住宅ローンの契約で定められる「期限の利益の喪失条項」
住宅ローンの契約には、多くの場合「期限の利益の喪失条項」が設けられています。
この条項は、債務者が契約違反をした場合に、分割返済の猶予を失い、残りのローンを一括で返済する義務が発生することを定めています。
具体的な喪失事由としては、返済の遅延や、担保となっている住宅の無断売却、虚偽の申告、自己破産や任意整理などが挙げられます。
債権者はリスクを回避し、ローンの全額返済を早期に求めることが可能になります。
この条項は、債務者にとって重大な影響を及ぼすため、契約時に内容を十分確認することが重要です。
期限の利益喪失のリスクと影響
一括返済の請求を受けるリスク
「期限の利益」を失うと、大きなリスクとして一括返済の請求を受ける可能性があります。
通常、住宅ローンなどの債務は長期分割での返済が認められていますが、期限の利益を喪失すると、債権者から残りの債務全額を一括で返済するよう求められます。
一括での返済に応じられない場合、債権者は法的手続きを経て強制的に債務を回収し、担保となっている物件が差し押さえられ、競売にかけられる可能性があります。
担保や保証人への影響
期限の利益を喪失した場合、担保や保証人にも大きな影響が及びます。
住宅ローンなどで不動産を担保にしている場合、債権者は担保物件を差し押さえ、競売にかけることが可能になります。
また、保証人がいる場合、一括返済の義務が保証人にも移り、債権者は保証人に対しても返済を請求できます。
保証人に多大な負担をかけることにもなり、債務者の信用や人間関係にも深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
期限の利益を喪失したときの対処法
債務者が取るべきステップと相談先
期限の利益を喪失し、一括返済を求められた場合でも、すぐに諦める必要はありません。
まずは債権者に連絡を取り、分割払いの再交渉や返済スケジュールの見直しを依頼しましょう。
早期に対応することで、債権者も柔軟に対応してくれる場合があります。
また、状況によっては、任意整理や債務整理などの法的手続きで対処することも可能です。
家の売却を検討する
期限の利益を喪失し、一括返済の請求を受けた場合、家の売却を検討することが一つの解決策です。
住宅ローンの返済が困難な状況では、不動産を売却して得た資金でローンを一括返済することもできます。
ローン残高よりも高い価格で不動産を売却できる「アンダーローン」の場合、住宅ローンを完済し、引越し費用や生活費に使える資金が得られることもあります。
一方で、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」の場合は、通常の売却ではローンを完済できません。
この場合は、金融機関の同意を得て不動産を市場価格に近い価格で売却する「任意売却」を検討します。
任意売却なら、競売よりも高額で売れることが多く、残った債務についても金融機関と相談しながら返済方法を調整できます。
競売の手続きが進む前に、早めに不動産会社へ相談しましょう。
任意売却を検討するなら「EC.エンタープライズ」
期限の利益を喪失してしまい任意売却を検討するなら、「EC.エンタープライズ」にお任せください。
住宅ローンの返済が困難になった場合、任意売却は、競売よりも有利な条件で不動産を売却し、返済負担を軽減できる方法です。
EC.エンタープライズでは、豊富な経験をもとに、専門スタッフが任意売却の手続きをサポートし、円滑な売却を実現します。
また、相談は無料で、住宅ローンに悩む方にそれぞれに合った解決策を提案しています。
任意売却を通じて、負担を減らし、新しいスタートを切るサポートを提供しています。
まとめ
期限の利益とは、債務者が一定期間内に分割返済を行うことで、一括返済を免れる権利です。
しかし、返済遅延や契約違反などにより期限の利益を喪失すると、残りの債務を一括で請求されるリスクが生じます。
特に住宅ローンでは、自分の財産や保証人に重大な影響が及ぶため、返済計画を厳守することが重要です。
万が一、期限の利益を喪失した場合は、早急に債権者と交渉し、専門家に相談することで、適切な対処法を見つけることができます。